PLAY TRUE 2020

PLAY TRUE 2020

© Keita Yasukawa

Truth in Sport

決してあきらめず、ひたむきに夢を追い続ける。

Jonathan (J): 今の僕にとって水泳は全てです。これまでの14年の人生の7割近くの時間打ち込んできたことですから。

Glen (G): そうですね、僕にとっても同じです。水泳は僕の全てです。
僕が水泳を始めたのはジョナサンより2年遅かったので、僕にとっては人生の半分の時間を水泳に捧げてきたことになります。
人には、成長していくなかで、多かれ少なかれ、自分の才能を見いだすチャンスがたびたび訪れると思います。僕にとってはそれが水泳でした。その才能を伸ばすためには、もちろん苦しいこともあります。それでも努力し続ける姿勢はとても大切です。それと同時に、楽しんで取り組む姿勢も絶対不可欠だと思います。楽しむ心を忘れてしまったら、僕にとってスポーツは意味を成さなくなってしまいます。

J: 競泳選手としての生活は、日々たくさんのことを教えてくれます。決する心、継続する心、そして、自分はできると自らを信じる心です。
少しありきたりかもしれませんが、僕が常に自分に言い聞かせていることは『ネバーギブアップ』という言葉です。

G: 僕も全くの同感です。もし水泳をやっていなかったら、ネバーギブアップの精神はおそらく身につかなかったと思います。
『夢を追い続ける』を、僕の言葉としてそこに付け加えさせてください。

J: アスリートにとって重要なこととして、先ほどグレンも言ったように、自分の打ち込むことに楽しさを見いだすことは、僕もとても大切だと思います。水泳を通して、信頼できるたくさんの仲間と出会うことができました。楽しむ心なくしてそういった出会いはなかったと思いますし、競技生活を通して仲間やライバルを作ることができるのも、スポーツが持つ大きな魅力の一つだと思います。
苦しいことにも、楽しいことにも、それぞれにスポーツの魅力が詰まっていると感じています。
例えば、レースで勝った、記録を更新した。これはアスリートとして最高の瞬間です。でも、はっきり言ってしまえば、これはただの結果であって、メダルや新記録はおまけに過ぎません。
最高の瞬間の真の価値は…

G: …そこにどう辿り着いたかという過程にあると思います。

True Moment in Sport

ジョナサン・タン & グレン・リム Jonathan TAN & Glen LIM

© SINGAPORE SWIMMING

age
2002

仲間の存在

J: 僕が水泳を始めたのは5歳のときです。水に落ちても溺れないようにといった理由で、両親に勧められたのがきっかけでした。最初はあまり乗り気ではありませんでしたが、家にいるよりはいいかな…という感じで通い続けるうちに、自然とのめり込んでいきました。

G: 僕もきっかけはジョナサンと同じく、両親の奨めでした。7歳のときです。
プールに通うたびに速く泳げるようになることが楽しく、徐々に熱中していきました。
水泳を始める前は、家でゲームばかりしていたので、健康的でアクティブな生活を送るようになったことに両親も喜んでいたようです。

J: グレンのことは昔から知っていましたが、ナショナルチームで一緒に練習するようになった1年前からとても仲良くなりました。

G: はい、得意な距離は違いますが、同じ自由形の選手としてお互い切磋琢磨しています。

J: 長距離を得意とするグレンの我慢強さには見習うべきところがあります。それから、プールの内外に関わらず、なによりもグレンは優しいです。困ったことがあればいつも相談に乗って助けてくれます。

G: 練習以外のオフの時でも、一緒に映画を見に行ったりすることもありますし、いい仲間です。たまにちょっとした喧嘩はしますけどね…。

J: 一昨年の12月に東南アジア水泳の年代別で初めてのメダルを獲得したことは、僕の競泳人生のなかでとても大きな出来事でしたが、困難に直面したときなどにそばにいてくれる家族や、グレンのような仲間の大切さを感じることができるのは、メダルよりもずっと大きな価値があるかもしれません。

G: 僕にとっても、去年の2月に800m、その翌月に1500m自由形のU-14 シンガポール記録を塗り替えたことは忘れられない思い出ですが、常日頃感じられる仲間の存在は、スポーツが与えてくれるとても大切なものの一つだと思います。

ジョナサン・タン & グレン・リム Jonathan TAN & Glen LIM

© Keita Yasukawa

決意とともに為せば成る

G: 僕たちは今、ともに競泳のナショナルチームで日々の練習に励んでいますが、まだ14歳なので、学生生活との両立をしなければいけません。そこには、タイムマネジメント能力が求められます。

J: 「スイマーとして高みを目指したい」と決意した以上、物事に優先順位をつけなければなりませんし、犠牲にしなければならないことがあるのは当然です。
僕らもいつかジョセフ・スクーリング(リオ五輪にてシンガポール史上初のオリンピック金メダルを獲得)のようになりたいと強く思っています。ジョセフが金メダルを獲得した100mバタフライの決勝レースは、シンガポールに残っていたナショナルチームのみんなで一緒に見ていました。その時はもう大興奮でした。

G: 今や国民的英雄のジョセフが、僕たちに与えてくれた影響はとても大きいです。今後、水泳の競技人口は更に増え、国内の争いも激しくなり、シンガポール全体の競泳レベル向上につながると思います。

J: つい最近まで「シンガポール人にオリンピックの金メダルなんて無理だ」と言われていたことを、ジョセフは覆してくれたんです。
「決意をし、ひたむきに努力し続ければ、成し遂げることができる。誰にでも夢をつかむチャンスがある」と彼は僕らに勇気を与えてくれました。

FUTURE

ジョナサン・タン & グレン・リム Jonathan TAN & Glen LIM

© Keita Yasukawa

オリンピックメダリストを目指して

J: 競泳選手としての最終的な目標は、やはり、オリンピックでメダリストになることです。
東京2020オリンピック大会が開催されるとき、僕は18歳です。この先の4年間で自分自身をどこまで高めることができるかはわかりませんが、謙虚に、まずは国の代表に選ばれオリンピックを経験すること。そして自分が世界のどのレベルにいるのかを冷静に見極めること。できれば、決勝レースに残れる実力を持って望めたらと思います。もしそれ以上に成長できていたとしたら、もちろん積極果敢にメダルを狙いにいきます。

G: 僕の目標もジョナサンと全く同じです。いつかオリンピックでメダリストになりたいです。
そして、これもまたジョナサンと同じですが、2020年までに、オリンピックの決勝レースに残れるような実力をつけたいです。固い決意と信念を持って努力し続ければ、不可能なことではないと信じています。たとえその結果がどんなものであろうと、努力の過程は、豊かで意義あるものになることは間違いありません。
スポーツ全般の未来を考えると、やはり、アスリートみんなにとってフェアであって欲しいと願います。そのために、僕たちもクリーンに戦うことの重要性を次世代に伝えていく必要があると思います。

J: まさにグレンの言う通りです。全てのアスリートが同じ条件下で競い合うことが、アスリートを更なる高みに成長させてくれるはずですし、それがスポーツの発展につながることだと思います。

Truth in Me

ジョナサン・タン & グレン・リム Jonathan TAN & Glen LIM ジョナサン・タン & グレン・リム Jonathan TAN & Glen LIM ジョナサン・タン & グレン・リム Jonathan TAN & Glen LIM ジョナサン・タン & グレン・リム Jonathan TAN & Glen LIM ジョナサン・タン & グレン・リム Jonathan TAN & Glen LIM

© Keita Yasukawa

水泳が教えてくれるもの

J: 多くのスイマーがそうかもしれませんが、僕は水泳を始めてすぐにトップレベルで泳げるようになったわけではありません。
一流のアスリートと、そのレベルに到達できないアスリートとを隔てるものは、生まれ持った才能ではないと思います。それは、壁にぶち当たったとき、あきらめずにその壁に挑み続けられるか否かだと思います。
努力はすぐに報われるとは限りません。どんなに頑張ってもうまくいかないこともあります。それは水泳に限ったことではありません。
そんな経験から僕が学んだこと、それが『ネバーギブアップ』の精神です。
これから先の長い人生のなかで、ひとりの人間として、そして競泳アスリートとして、乗り越えなければならない困難はたくさんあると思います。
“出口のないトンネルはない”という言葉を信じ、『ネバーギブアップ』の精神を胸に、前進あるのみです。

G: 僕は自分自身のことを、強い意思をもったアスリートであると自負しています。例えば、朝起きて気分が乗らないことがあったとしても、自らに鞭を打ちトレーニングに向かう強い意志があります。こんなことは、アスリートだったら当たり前のことかもしれませんが、基本的なことであると同時に、最も難しく最も重要なことの一つだと思います。
そして僕は、競泳生活を通じ、競泳選手でなかったらおそらく学ぶことができなかったであろう、人生の核となるような価値観を身につけることができました。
“望むべきものはたやすい人生ではなく、厳しい人生を生き抜くチカラである”
この言葉を心に、ジョナサンに負けないようこれからも頑張っていきます。

ジョナサン・タン & グレン・リム Jonathan TAN & Glen LIM PLAY TRUE2020

ジョナサン・タン

生年月日
2002年3月11日生まれ
国籍
シンガポール共和国
種目
競泳・自由形

両親の奨めで5歳から水泳をはじめ、7歳から競泳の道に入る。
2015年にナショナルチーム入り。
同年、ベトナムで開催された年代別の東南アジア大会でメダルを獲得。
2016年11月に東京・辰巳で開催されたアジア水泳選手権では 50m、100m、200m、400m自由形、100mバタフライにエントリー。
400mメドレーリレーでは、アンカーとして決勝に進出する。

グレン・リム

生年月日
2002年3月28日生まれ
国籍
シンガポール共和国
種目
競泳・自由形

7歳から水泳を始める。
2015年ナショナルチーム入り。
2016年2月、12年間破られることが無かった800m自由形14歳以下のシンガポール記録を打ち立てる。
2016年3月、1500m自由形でも14歳以下のシンガポール記録を更新。
2016年11月に東京・辰巳で開催されたアジア水泳選手権では400m、1500m自由形などに出場。
400m自由形リレーには、ジョナサンとともに出場。